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美術解剖学
ARTISTIC ANATOMY


 

美術解剖学について

美術解剖学は主に人体の構造と比例、形態美について学ぶ、造形美術教育の一課程である。
西洋ではルネサンス以降〜19世紀末までは遠近法・色彩学と共にアカデミーの必須科目であった。日本では西洋美術の導入期が外交派の流行と重なり、それほど重要視されてこなかった。(「工部美術学校における絵画・彫刻教育」を参照)東京美術学校より正式な科目となった。少なくとも初期には熱意が感じられるのだが(「医学解剖と美術教育」を参照)、20世紀における抽象芸術の台頭に伴う実技教育との乖離はいかほどであっただろうか。

上図のレオナルド・ダ・ヴィンチの描いたウィトルウィウス的人体図と以下の説明を見ればわかるように、レオナルドは人体を含む自然を詳細に観察し自然から多くを学んだが、自然をそのまま受け入れるのではなく、「幾何学的な秩序」を持たせ、自然を克服・超越したいと欲したのである。

「両腕を広げた時の長さは背丈に等しい。
身長が14分の1だけ低くなるように両足を広げ、
さらに両腕を伸ばして中指が頭のてっぺんと同じ高さになるまであげる。
このように伸ばした手足の先をよぎる円を描くと、
その円の中心にこの人のへそが来る。
また、両足の先の間の間隔と両足とは正三角形を作る。 」

20世紀は美術解剖学にとってまさに“冬”の時代であっただろう。しかしその反動で「失われた基礎」として再教育を必要としている人も少なくない。また、近年の日本では意外なところからもニーズが拡がりつつある。漫画やアニメーション、3DCG、フィギュアなどである。これらは視覚的に認知しやすい、極めて具象的な表現をとることが多い。

アメリカでは伝統に対する一種の憧れからアカデミックな知識や技術を求める傾向も根強く、美術解剖学のある大学・アートスクールでは人気講座の一つとなっている。イタリアなど観光が大きな産業の一つである国では修復との関連から講座を設置している場合が多い。
解剖図、模型からでもある程度の知識は得られるが、実際のボリュームと運動による形体の変化は生身のモデルを用いるのが有効である。予め解剖図や巨匠の裸体デッサンをトレースしておくのも実際に観察する時に役立つだろう。一方、理想的な人体比例や幾何学的な構造は人間が作品に与えるものであり、必ずしも自然から得られるものではない。

解剖学が医学において基礎教育であるように、以下の観点から美術解剖学は芸術における基礎教育として重要なものとなる。造る側も観る側も人間であり、人間について深く知ることによって、作家の意図した効果を多くの鑑賞者へ伝えることができる。心理学、生理学、脳科学の研究はマルチメディアやマスメディアの分野などで広く活用されている。しかし大衆芸術や商業デザインでは既に当たり前のことでも、主観偏重の美術教育(自由と放任主義)の中では十分に生かされていなかったのが現状である。

ただ、現状に於いては美術解剖学が全ての芸術家にとって必須だとは思わない。無対象絵画や非幾何学的抽象を志向する学生には関連性を見出すのは困難だろう。指導者の好みによって取捨選択がなされる時代は終わりを告げ、本当の意味での選択の自由が必要だと思う。
※この文章は書きかけです。 一般的な美術解剖学の定義や歴史などはWikipediaを参照。


参考文献
和書/図解 著者 出版社
ARTISTIC ANATOMY Dr. Paul Richer Watson-Guprill
ANATOMIE ARTISTIQUE ARNOULD MOREAUX MALOINE
Art Anatomy William Rimmer Dover
目でみる筋力トレーニングの解剖学 フレデリック ドラヴィエ 大修館書店
美しいボディラインをつくる女性の筋力トレーニング解剖学 フレデリック ドラヴィエ 大修館書店
人体−画家のための描写法 ジョン・ヴァンダーポール ダヴィッド社
人体構造論 アンドレアス・ヴェサリウス 講談社
デッサンのための美術解剖学 J.バーチャイ エルテ出版
人体を計る 計測値のデザイン資料 小原 二郎 日本出版サービス
美術解剖図譜 内田 謙 人間と美術社
体育解剖学 体育解剖学 南江堂
入門美術解剖学 高橋 彬 医歯薬出版
生体の観察 中尾 喜保 メヂカルフレンド社
人体美学 上・下 美術解剖学を基礎として 西田 正秋 現代社
生命形態の自然誌 三木 成夫 うぶすな書院
人体解剖カラーアトラス 佐藤 達夫 監修 南江堂
体表解剖カラーアトラス 佐藤 達夫 監修 南江堂
人体の図詳図鑑   学習研究社
驚異の小宇宙・人体T  1〜6 NHK取材班 NHK出版
驚異の小宇宙・人体U 脳と心1〜6 NHK取材班 NHK出版
驚異の小宇宙・人体V 遺伝子1〜6 NHK取材班 NHK出版
ここまでわかった脳と心   集英社
人体の不思議   メディイスト
大顔展(図録)    
解剖学教室へようこそ 養老孟司 筑摩書房
解剖学個人授業 養老孟司・南 伸坊  新潮社
唯脳論 養老孟司 青土社
養老孟司対談集・脳が語る身体
養老孟司 他 青土社
養老孟司対談集・脳が語る科学 養老孟司 他 青土社
     

Skeleton on the stairs

 

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Clay figure from living body