「長縄先生なんて呼ばないで。えい子さんでいいのよ」
初対面のときから、気さくにお話してくださった彼女とは、かれこれ10年以上のお付き合いになるだろうか。
そのエネルギッシュな活動ぶりは、とてもここで語り尽くすことができないが、少しでも魅力をご紹介できればと思う。
<2002/8 JAZZライブハウスにて>
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国内のみならず、海外にも多くのファンをもち、引っ張りだこで多忙なえい子さんに、おこがましくも「紙芝居を描いていただけませんでしょうか?」などというお願いをしてしまったのが、私が、座・まりりんというグループを立ち上げたばかりの頃だった。
「いいわよ」二つ返事で、快諾してくださったえい子さん。今思うと、まったくもって無謀というか、ほんとに図々しいヤツだったと反省しているが、おかげさまで、紙芝居(三枚のお札)は、あちこちの子どもたちの前で上演させていただいており、迫力ある絵がタイヘン好評。私の生涯の宝物になりそうだ。
そういえば、えい子さんがニューヨークで初の個展を開催されたときに、オープニングパーティーで、英語バージョンで語らせていただいたのも懐かしい思い出。(もちろん、英語を話せない私は暗記ではなく、裏書したものを読んだのだが、インパクトのある絵柄で、ストーリーは現地の人にもちゃんと理解していただけたようだ)
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浅草のダンサー
(油彩)
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えい子さんの作品の魅力は、そこに描かれている人物一人一人にこめられてる魂とでもいうか、時に、それは、えいこさん自身がのり移っているのではないかと思われるような、既成概念にとらわれることなく、自然体で、それでいて計り知れないオンナのパワーを感じさせるところだろうか。
個展会場で、作品の前にたたずんでいると、今にも、その一人一人のキャラクターが、こっちの世界に飛び出してきて、なにやら一騒動やらかしそうな錯覚に陥ることさえある。いや、誰もいなくなった会場では、ひょっとすると、そんな光景が繰り広げられてるのかもしれない。
花売り娘
(水彩)
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個展を開く傍ら、えい子さんは、次世代をになう芸術家たちの育成にも力を注ぐことを惜しまない。絵画教室での指導は、30年近くになるという。それはもはや国内だけにはとどまらない。
一昨年、昨年と、カンボジアで小学校の先生たちに絵や絵本作りの指導をされてきた。(第一回絵本作家養成セミナー)集まってきたのは、絵筆を持ったことさえない小学校の先生。子どもたちはなおさらのこと。そんな途方にくれる現状に向き合いながらも、彼女は、まず、自分の手や顔、そして自然の風景をじっくりと見て描くことから教えた。
そして、現地に伝わるお話をひろいあげ、絵本にしていった。自分たちで作る自分たちの国のお話の絵本。それは、カンボジアの文化再構築の一端をになう活動ともなった。
現地フランス語の日刊紙カンボジアソールの一面に紹介された記事が、彼女の活動のすばらしさを物語っている。
セントラルパークのおのぼりさん
(油彩)
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昨年世界を驚愕させたテロ事件直後、「銃より絵筆を」と、ニューヨークでの2度目の個展を行うため、現地に飛んだ。
私など、飛行機に乗ることすらおののいていた時に、そんな精力的な活動をしていたとは、敬服の一語。
「化粧する闇」というテーマで行われたこの個展。
「闇」があってこそ「光」が美しく輝く。闇の中には、豊穣な世界が存在している。
そこに大いなる魅力を掻き立てられ、生み出されてきた作品たち。
「秩序」や「調和」などから解き放たれた「女の時間の中にいる女」を描いている。
長縄えい子創作展「化粧する闇」より
>>Real Player(2.7MB)
(水彩)
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さて、今後の彼女の活躍ぶりも、ますます期待できるところだが、
「もう自分で企画する個展はやらないことにしたの」との言に、え?と、一瞬たじろがされた。だが、考えてみれば、あちらこちらのファンによる企画が目白押しで、どうやらそんな必要もないというのが、実情だろう。
さしあたっての目玉は、2002年9月、10月に行われる「長縄えい子回顧展」18歳から現在にいたるまでの個展で発表した作品に加え、未来作品を含む小品から大作まで約70点を一堂に展示、回顧するという、ファンにはたまらない企画展だ。長縄ワールドを体験したことない方には、この機会にぜひ、足を運んでいただけたらと思う。
<長縄えい子回顧展>
日時:2002年9〜10月
場所:柏わたくし美術館
柏市若柴1-358
04-7134-8293(要予約)
開館日:日月火水木(13:00-17:00)
入館料:500円(18歳未満200円)
後援:柏市教育委員会 |
「わたしもねえ、おだてに乗るほうだから、“根性”なんてもんはもちあわせてないらしいのよ。カンボジアに行くのも、NYに行くのも、困ってる人が、ほんの少しでも笑ってくれるのを見るのが好きだから・・・。要するに、好きなことだけに、生きていたいなって思うのね」
これはえい子さんからのFAX
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好きなことだけ・・・とさらりと言ってのけるえい子さん。彼女が生み出す作品たちはもちろん、彼女の生きざまそのものが、周囲の人たちに、日常の既成概念から解き放たれるような心地よい風を送り込んでくれ、より愉快に楽しくと、心が躍らされる・・・そんな不思議なエネルギーを与えてくれる人なのだ。
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